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うつわに暮らしを映す。うつわ ももふく

time 2018/06/26

うつわに暮らしを映す。うつわ ももふく

住宅街から少し外れたところにその店はありました。ガードレールのない道沿い、原町田(はらまちだ)と高ケ坂(こうがさか)の境のあたり、住宅街から坂を少し下ったところに、ガラス越しに落ち着いた色合いの、趣味のよいうつわが見えます。

 

 

「うつわ ももふく」はオーナーの田辺さんが一人で切り盛りするうつわのお店。自らの足で作り手や窯元(かまもと)を訪れ手に入れた、普段使いの食器類を販売しています。
 

居心地のよい店内

 

 

木とガラスの古びた雰囲気のドアを開けたすぐのところに大きな木のテーブルが。天板は厚く、どっしりと重厚な造り。取材のこの日はちょうどうつわ作家・川口武亮(かわぐちたけりょう)さんの個展をやっていました。有田に居を構える陶芸作家さんです。

広い天板の上に整然とうつわが並びます。どれもお客さんが手に取って土の感じに触れたり、うつわの大きさや重さを感じたりしてもらえるように工夫がなされています。

ももふくのうつわは、たしかに手に取ってみたくなるものばかり。
『粉引き』や『刷毛目』と呼ばれる陶器の多くは青みがかった白または灰色の釉薬がかかっていて、シンプルなデザインのものが並びます。落ち着いた、静かな色合いが印象的です。

これは店主の田辺さんの信条でもあります。普段使いのうつわだからこそ、ももふくのWebサイトの中にある言葉通り、『奇をてらったものではなく、シンプルな中にも美しさと品があり、心地よさとぬくもりを感じることができ、使うほどに味わいが増すもの』でそろえる。

同じ手法で作ったとしても、作家の個性がまずフォルムや風合いに宿り、それを手にした人が日々の生活を共にしていくうち、その人の暮らしが色濃く映し出されていくのですね。

 

 

昨日が個展の初日だったというのに、ほぼめぼしいものが売れてしまって、常設展とあまりかわらなくなったと微笑みながら答える田辺さん。作家ものの個展では、たいていの場合、待っていましたとばかりにファンの方が次々に購入していくようです。

 

店舗探し
店内は数々の静かな色合いのうつわが収まりの良いように、濃い茶色の棚が置かれ、柱も棚と同色で統一されています。
お店をはじめて14年。スタートから4年弱は自宅のある玉川学園でお店を構えていました。
お店と言っても玄関口にうつわを並べてそれっぽく体裁を整えていた程度のもので、とにかく手狭だったとか。

いまのこのお店へ移るときの店舗選びもお一人でこなします。もともとが建築関連のお仕事をされていたこともあり、店の設計図などは自分で引くこともできました。そこで、お店の青絵図にほぼ近い物件を、予算などと合わせて地道にあたっていったのです。
その甲斐あって、手直しした箇所はごくわずかで現在の設えに。在庫を収納する納戸スペースはまるで壁に作り込まれた隠し棚のようになっていたりとどこかスタイリッシュです。

うつわを並べる家具類もすべて店主の田辺さんがチョイスしたもの。花差しに飾られた花もおそらく自前。庭に咲いていたものを摘んでこられたのでしょうか、一輪だけさりげなく差してあります。

そして気付くのです。このお店自体が、田辺さんの作品そのものなのだと。

 

 

 

お店のために人知れず努力
なぜうつわ屋さんなのかという問いに、好きだったからと端的にお話ししてくださる田辺さん。
ここまで来るのに、人知れず努力していらっしゃいます。まず、売り物に関する知識を増やしておくこと。

 

 

うつわはワインのように深い造詣の必要なもの。
たとえば陶器。どこの土で焼かれたのか、作り方はどんなものなのか、釉薬はどんなものを使っているのかなどなど、フィーチャリングしていくだけでもかなりの知識量が必要です。

それでも「好きこそものの上手なれ」とばかり、大好きなうつわに関しては知識を得ることはそれほど苦にならなかったかもしれません。

彼女はまた食品衛生責任者の資格も取得しています。

このお店、喫茶店としても展開できるように店の奥にはキッチンが設えてあったらしく、それを使わない手は無いだろうというのが資格取得のきっかけだったようです。

うつわをより魅力的に見せるのは、料理がのった姿だと直感。事実、うつわに彩りのよいサラダやおいしそうな食事を盛り付けて写真を撮影してサイトに掲載するなど、しっかり資格を生かしたプロモーション活動を行っているのです。

それからラッピング技術。うつわに合わせて箱と紙と紐で手早くおしゃれにラッピングしてくれます。

どんなお店にしたいか、どんな風にお店を展開して行きたいのかを長いこと温めて温めて、形にしたことが手に取るようにわかります。そのための努力は惜しまない、そしてその努力はあまり人にみせないように、さらりとかわすところも彼女の美学と言えます。

磁器は青の絵付けのものでそろえられています。 置物はごくわずかに置く程度。あえてうつわに特化しています。

磁器は青の絵付けのものでそろえられています。
置物はごくわずかに置く程度。あえてうつわに特化しています。


うつわへのこだわり

ももふくのうつわの仕入れは、田辺さんがすべて担っています。仕入れるポイントは、自分の好みに合っているか。その一言に尽きるでしょう。

日々の暮らしに自然に溶け込む色と風合いを備えたうつわ。着慣れた服のようにしっくりとなじみのよいうつわなのです。

お店のコンセプトにあった作家さんと巡り会うためには、時間を惜しみなく使います。陶器市へ足を運び、うつわと出会い、作り手と出会う。窯元を訪ね、話をする。そうした作業は、けっして楽なものではなかったでしょう。地道に人とのつながりを紡いでいった結果、彼女が抱える作家さんは気付けば40名以上に。

作家もののうつわを扱うという彼女の商いに対する矜持(きょうじ)が、手抜きや妥協を許さないのです。うつわそのもののていねいな説明は、作り手の人となりを示します。それは、うつわが作り手の人物像を饒舌(じょうぜつ)に語ってくれるからなのです。

 

 

 

作り手との二人三脚
ももふくに出すうつわの中には、買い付けるものもあれば作家さんにオーダーするものもあります。うつわの大きさや厚みなど、実際に使ってみて印象を話したり、要望を伝えたりします。

そうした作り手とのやり取りが、彼女の“うつわを売る人”“うつわ屋の店主”としての気持ちを鼓舞してくれるのかもしれません。趣味では終わらない。かといって、“売らんかな”に走らない。

ありがちな言葉ですが、よい品物をていねいに売っているのです。そのせいか、ももふくでうつわを買っていく人はなぜか誇らしそうでもあります。

商売を続けて14年が経とうとしているももふくには、自身の作品を持ち込む人もいるそうです。作風がももふくにマッチすれば売る事もできますが、残念ながら作風が合わない場合も。

そんなときはむげに断るのではなく、自分の店のコンセプトには合わないけれど、その作品が合ううつわ店を紹介してあげるのだといいます。

うつわを作る人の中には、セルフプロデュースの上手くない人もいます。わらにもすがる思いでももふくにやってくるのかもしれません。そうした人にもていねいに接するからこそ、店の信用を築けるのでしょうね。

ガラスの物や、お箸やお盆など木工品も取り扱っています。

ガラスの物や、お箸やお盆など木工品も取り扱っています。

 

Instagram(インスタグラム)は大事な商売道具
取材中、気になった事がありました。経験上、大抵のお店は”写真撮影お断り”のスタンスなのですが、ももふくさんはジャンジャン撮影してもOKなのです。そのことをちょっと尋ねると、むしろウェルカムなのだとか。

”うちのような小さな店は、知ってもらうことが大事なので”という枕ことば付きで、Instagramの爆発的な広告力を教えてくれました。

事実、ももふくはウェブサイトを始め、Twitter、FacebookなどSNSでもお店を宣伝しています。中でもInstagramは毎日更新。というのはInstagramは若い世代に圧倒的な支持を得ており、その訴求力はあなどれないからなのです。

 
Instagram世代は片時も情報を離さない
Instagramはパワーのある広告媒体です。画像として情報をダイレクトに可視化でき、なおかつ手軽に共有できます。さらにInstagramを駆使する人々は、片時もスマートフォンを離すことがありません。それは、常に自分にとって優良な情報を手中に収めているのと等しいのかもしれません。

だからこそ、スマートフォンによる写真撮影もまったく問題視していません。ももふくでうつわとの邂逅(かいこう)を果たした人は、その感動から写真を撮りたくなるようです。

 

 

ですから、夢中になって写真撮影されているお客様に、無用な声がけはせず、静かに見守っています。中には写真撮影の許可をわざわざ得て自分のInstagramに載せている人も。そうした人達の行動が、店の宣伝につながるのだということを田辺さんは体感しているのです。
 
 

「うつわ ももふく」基本情報

 

 

・店舗名:うつわ ももふく
・所在地:〒194-0013 東京都町田市原町田2-10-14 原町田ハイツ101
・営業時間:12:00~19:00
・定休日:日・月・祝
・電話番号: 042-727-7607
・アクセス:小田急線「町田駅」西口より歩10分、JR横浜線「町田駅」北口より徒歩8分
・URL https://www.momofuku.jp/
・twitter https://twitter.com/utsuwa_momofuku
・facebook https://www.facebook.com/utsuwa.momofuku/
・instagram https://www.instagram.com/utsuwa_momofuku/
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【ギフト対応】
ギフトラッピング用の包装紙は、やはりシックな茶色。うつわをていねいに緩衝材でくるんだあと、箱入りは1つ当たり216円で、箱無しは無料で包みます。
うつわの大きさや形に合わせて数種類の包装紙を、大きい場合はセンターでダーツをとっておしゃれな箱包みにします。箱に合わせて包装紙を定規で切ったりすることはめったにありません。
 

 

とにかくその手早さにびっくり。これも、店のオープンに備えてあらかじめラッピングを習いに行っていたからこそ。とにかく勉強家。何が必要かをきちんと把握して、事前に取得してから実践に入るところなどは几帳面な彼女の性格を如実に表していると言えるでしょう。
 

 

自分で使うにしても、自分への特別なギフトとしてラッピングしてもらいたくなるほどです。ラッピングが素敵だから、箱を開けるのももったいない気分になります。

 

海外への発送は?
これだけ趣味のよい上品な和のうつわですから、海外のファンから、購入に関して相談があるにちがいない。そう踏んで思い切って海外発送をしているか聞いてみたら、やってはいないとのお返事。
というのも、海外は配送状態が非常に荒っぽくて、うつわという品物の性質上、安心して発送できないからだそうです。

魅力的な和食器、それもクラフトマンシップあふれるものです。一点物という特異性もあります。何より届いた時に壊れていたら、その落胆ぶりは想像できますから……。

うつわは壊れるものではあります。だからこそ、ももふくでは金継ぎのワークショップを不定期に行っています。壊れてもなお、金継ぎすることで長く愛用してもらえる、長く大切にして欲しいという思いから立ち上げています。新しいうつわの購入を勧めることもできるのに。それが実店舗を持つ意味なのかも知れません。

うつわの感触や重さを実感することは実店舗だからこそ味わえる経験です。そして店主の人となりに触れ、うつわや焼きものの話を聞くことも。駅から少し歩きますが、田辺さんと彼女の愛するうつわ達に会いに来る価値は絶対にあります。

 

 

いかがでしたか?ももふくのうつわは使いやすく、出しゃばらない美しさにあふれています。人の暮らしを彩るうつわ、普段の生活の一点物をお探しなら、原町田の住宅街の端、小さなお店に足を運んでみてください。あなたを映すうつわがそこにあります。

Writer 今井美枝子


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