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日常はきれいな物にあふれている PEDLAR

time 2018/09/25

日常はきれいな物にあふれている PEDLAR

”Pedlar“はイギリス英語で「その昔、小物を売っていた商人、旅商人、行商人」という意味です。このお店を立ち上げた頃、店名として一番に掲げたのはこの単語でした。古びたブリキ板に「PEDLAR」の文字。

 

 

驚くなかれ、このシックでシンプルな看板も店主の手作りなのです。ここが今回お邪魔する雑貨店です。

JR横浜線、または京王相模原線の「橋本(はしもと)」駅で降車、南口を下りて、道沿いに繁華街を少し歩くと煉瓦色のタイルを張ったビルが見えて来ます。その入り口にひっそりと、あのブリキ板の看板が。

看板にいざなわれ階段をあがると、ビルの2階、階段を上がりきったすぐのところに「PEDLAR(ペドラー)」はあります。ここに居を構えて15年、雑貨に加え、洋服や食品も取り扱うお店です。

 

白が基調の明るい店内

 

 

白い壁がまぶしい明るい店内には、東側の壁一面に広がる大きい窓から日が差し込んでいます。お邪魔したその日はとても暑い日でしたが、空調は冷えすぎず、とても心地よい温度でした。

入り口には涼やかな木綿のスカートやストールがディスプレイされて、奥には生活雑貨が整然と並んでいます。

PEDLARの生活雑貨は、店主が実際に使ってみて“いいな”と思えた物だけで構成されています。それは単に“あったら便利”というだけでなく、生活に溶け込み、使う人を幸せな気分にさせ、置いていて美しい物。店主が一点一点ていねいにセレクトした雑貨たちは、まるでこのお店のために包装などが用意されたかのように、落ち着いた色調で統一されています。

 

 

もともとインテリアのショップスタッフとして長く働いていたこともあり、店に置く商品の買い付けなどノウハウは自然に習得。その経験を生かして、お店の雑貨はすべて店主である松井さんが買い付けます。手に取って、初めてわかる質というものがあります。彼女の雑貨に対するこだわりは実際に使ってみての価値。いくらおしゃれでも、機能的でないと感じたらその時点でお店に置かれることはないのです。

スタート時は純粋にインテリアだけを扱っていたPEDLARも、お客様の要望を聞くうちに、セミオーダーの洋服の受注会や、なかなか地元では手に入りにくいパンやケーキの販売会を開いたりと忙しくなりました。スタートして15年、初めのうちはアルバイトなどをしてこの店をなんとか維持してきた時期もありました。今やお店は駅近の店舗の中では橋本でも古参の仲間入りを果たそうとしています。

 

店舗探し
なぜ橋本にお店を構えようと思ったのか尋ねてみると、“自分が幼い頃から知っている街だったから”という答えが返ってきました。
3歳か4歳の頃に、両親と共にここ橋本に移り住んでから現在に至ります。この橋本は彼女のホームベース。自由が丘のインテリアショップに勤めていた頃は、自分が独立して店を出すなら同じようなロケーションを、と思っていたと言います。

ところがいざ実店舗探しとなると、賃料や維持費などシビアにコストを考えなければなりません。それに店舗を知ってもらうための広告費も現実問題として発生します。
橋本なら、地元の友達のツテや口コミなどでお店のことを紹介してくれるかもしれない、という考えもあったといいます。

出店するに当たりどうしても譲れなかった駅に近いという条件は、地元のネットワークならではというのでしょうか、なんとかクリアする物件の紹介を受け、ほぼ要望どおりの大きさの現在の店舗を見付けることができました。

 

すべてがほぼ手作り
お店の開店資金は潤沢とはいえなかったので、店舗の内装はほぼ自分の手でコツコツと作り上げてきました。
古道具屋に行き、たとえば農機具と棚板を組み合わせて、なんとも風格のある陳列棚を作ったり。古ぼけた物も、再び息を吹き込まれたかのように、このお店では機能するのです。

 

 

また、近くに美大(多摩美術大学)があることから、学生さんの習作として棚やスツールを譲ってもらったりもしています。陳列している商品のみならず、什器(じゅうき)に趣があるのはそうしたことも理由かも知れません。
あえて古びた風合いの陳列棚に、同じトーンのドライフラワーをさりげなく飾る。その巧みなレイアウトが並んだ商品を生き生きと見せてくれます。商品は一つ一つ見やすいようにゆったりと陳列されていて、手に取って風合いを感じてもらえるようにしています。

取材を忘れ、つい夢中になってお店を探索している自分に気付き、ハッとしてしまいました。それほどに居心地の良いお店なのです。

 

 

手仕事の美に魅せられて
PEDLARの商品は秀逸な手仕事の粋を感じる物が多くあります。たとえばこぎん刺しのコースターは、作家さんに模様と色合いをオーダーして作ってもらっています。

 

 

手縫いの卓上の和箒(わぼうき)も置いてありました。食卓でパンくずを掃くのもよし、机の上の消しゴムかすを掃除するのにもよし、使い勝手は購入者の思いのまま。しっかりとしたていねいな作りをしているので、何年も使うことができるのです。

このお店のきっかけともなった手作りのあみかごがあります。それは彼女がこのお店を始めた頃からずっと提供している物で、ショップでお勤めしていた頃、休みを利用してよく訪れたインドネシアのあみかごに魅了されたのがきっかけでした。

形のかわいらしさもさることながら、使い勝手が良く、手仕事ならではのていねいでしっかりとした作りから何年でも使うことができる機能性の高さにすっかりとりこになったのだと言います。

  

  

こんなすてきな商品を売りたい。旅をしながら物を売る“Pedlar”にあこがれ、仕事の粋とも言える商品を買い付けて売ってみたいという思いが、お店の屋号にまでつながったのです。

 

生活の中にこそ、美しさがある
インテリアショップでの仕事はそれなりに充実していました。買い付けのノウハウも教わることができ、商品が売れるうれしさ、接客の楽しさもそのインテリアショップで知ることができたと言っても過言ではないでしょう。

ただ、彼女は自身の中に生まれた違和感をどうしても消すことができなかったと言います。
ショップで扱うインテリアはそれこそデザイナーの作品で、驚くほど値の張る物が多かったと言います。自分の生活の中で、そうしたインテリアに触れることはほぼ無く、ほとんどそのインテリアの良さをわかっていないにも関わらず、それを客に売ることの末恐ろしさを感じたことも。

 

 

実生活の自分とショップで高価なインテリアを売る自分との乖離(かいり)に耐えられなくなったのだと言います。
生活に根ざした本当に良い物。それは自分の生活を通してしか見いだすことはできないと気付かされます。

結果、PEDLARでは彼女が実際の生活の中で使ってみて本当に良かった物を置いています。コースターの洗濯のしかたも、すべて使っていたからこそ説明ができる。商品の横に添えられた説明文は、実感のこもった物が多いのも特徴です。

 

 

日常の暮らしの中に美しさがあふれている、きれいな物、好きな物に囲まれて、日々を暮らしたい。そんなささやかな暮らしに対する思いや願いが、形になったようなお店なのです。

 

だから暮らしを大切にする
お店の時間は短め、休みが多いお店です、とちょっと照れくさそうにほほ笑みながら話してくれる松井さん。
店舗経営のコツというものを教えていただきました。それは、決して無理はしないということ。生活雑貨を主に扱うお店だからこそ、接客中に生活にくたびれ果てた様子は絶対に見せてはいけないと感じています。

店主の松井さん。この日はお店の口開けにお邪魔しました。

店主の松井さん。この日はお店の口開けにお邪魔しました。

家族の理解はあると言っても幼子を抱えての店舗経営はそれなりに厳しいものがあります。子どもは決して自分の思う通りには動いてくれない。日々の暮らしの中でギスギスした思いやキリキリした感情は、家族にも店舗経営にもマイナスにしかならないことを実感しているのです。

暮らしを楽しみ、それをお店に生かす。それがPEDLARのスタンスなのかもしれません。

 

接客が好き
松井さん自身は、接客が好きだとのこと。出しゃばりすぎず、さりげない接客態度だからこそ、居心地が良いのです。
また、お客様の中には遠方から訪ねて来られる向きも多いと言います。取材のこの日も、埼玉県から車で来られたお客さまが。聞けば欲しいかばんをネットで検索していたところ、このお店に行き着き、今日は2回目の来店だと言います。店主の松井さんの人柄に触れ、お店の雰囲気といい、接客の様子といい、すっかり気に入って再来店を決めたのだとお話ししてくださいました。

PEDLARにはこうした常連客が多く、そうしたお客様による口コミが一番の宣伝であるとも語ってくれました。これまでもいくつかのおしゃれな媒体の取材を受けている同店ですが、その時は一時的に注目を浴びるけれども、すぐに多くの情報に埋もれてしまうこともわかっています。

 

 

しかし常連のお客様は、この店のことを大切に思ってくれていて、企画展やイベントにも必ず参加してくれる。そうした人とのつながりが、今に続いているのだと感じました。

 

ぶれない信条
とてもたおやかでやさしい雰囲気の松井さん、商品に関してだけは絶対に譲れない思いがあります。それは自分が使いたいか、自分が喜びをもってそれを人に勧められる物かどうか、ということ。

手仕事の逸品を販売している同店には、自分の作品を売ってもらいたいと交渉に来る作家さんもいらっしゃるようです。そんなとき、まず写真で検討させてもらい、自分の商品に対する信条に合わなければ丁重にお断りするそうです。

決してぶれない信条がなければ、お店は個性を持つこともままならない。それを体現しているように感じました。

 

 

「PEDLAR」店舗情報
・店舗名:PEDLAR(ペドラー)
・所在地:〒252-0143 神奈川県相模原市緑区橋本2-3-5 岩澤ビル2階
・営業時間:11:00~17:00
・定休日:日・月・水
・電話番号:  042-854-7250
・アクセス:京王相模原線「橋本駅」南口より徒歩2分、JR横浜線「橋本駅」南口より徒歩3分
・HP:http://pedlar.jp/
・Twitter:https://twitter.com/pedlarzakka
・Instagram:https://www.instagram.com/pedlarzakka/
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【ギフト対応】
ギフトラッピング用の包装紙は、物によって変わりますが、今回見せていただいたのはちょっとしたプレゼント用の袋を使ったラッピング。手際よく、包んでいきます。お持たせ用の袋は真っ白。とてもシックな色の組み合わせです。
 

 

かごなどの大きめな物には淡いグリーンの包装紙に、麻の編み糸を添えるというラッピング。爽やかな色合いで気持ちも高揚します。
 

 

とにかく手際がいい。お客様と軽くおしゃべりしながらみるみるうちにラッピングしていきます。このラッピングのアイディア、普段の暮らしにもちょっと生かせそう、そんな思いを抱かせてくれます。

 
店主の松井さんいわく、「あと5年で20年、20年経ったらちょっとだけ、お店続けているんですって他人様(ひとさま)に言ってみようかな」とのこと。続けるのは並大抵の努力ではできないことです。商いを飽きないで続けることのすごさに触れることができました。

PEDLARの雑貨は、人の暮らしの中にこそ、きれいな物があふれていることを教えてくれるような、温かみにあふれた手仕事の逸品にあふれています。暮らしが楽しくなるすてきな雑貨一点物をお探しなら、ビルの2階の静かなこのお店に足を運んでみてはいかがでしょう。あなたがお探しの、手に馴染みの良いすてきな生活雑貨に巡り会えること請け合いです。

 

 

writer 今井美枝子


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