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暮らしのもの 十和 ~彩りある暮らしを永久(とわ)に~

time 2018/08/03

暮らしのもの 十和 ~彩りある暮らしを永久(とわ)に~

お寺の参道に、めずらしい手仕事のお店があると聞きました。
「鎌倉駅」東口を出て、にぎやかな鶴岡八幡宮とはすこし違う方角にある妙本寺を目指します。6分ほど歩くと、妙本寺の参道沿い・幼稚園の向かい側に「暮らしのもの 十和」が佇んでいます。

1坪ほどの小さなお店の店主は、宇野十美子さん。どんなお話を聞けるのだろうと、かわいらしいお店に足を踏み入れました。

コンセプト:暮らしを豊かに彩るもの

手づくりの温かみが感じられるスプーン。左の真鍮のスプーンは富山県高岡市で作られています。

手づくりの温かみが感じられるスプーン。左の真鍮のスプーンは富山県高岡市で作られています。


人の手の温もりを、日々使っていただけるものを通して感じてほしい。宇野さんはそんな思いでお店に立っています。それだけに暮らしのもの 十和のコンセプトは、「暮らしを豊かに彩るもの」。

このコンセプトに基づき、扱っているのは日本国内の作家さん・職人さんが手がけたものです。器だけでなく、暮らしの中で使う雑貨道具も陳列されています。

鎌倉の景色を描いた水彩画のハガキ。北鎌倉在住の画家さんによるものです。

鎌倉の景色を描いた水彩画のハガキ。北鎌倉在住の画家さんによるものです。

日本の伝統を宿した暮らしの道具には、若い職人さんの感性も吹きこまれている、と宇野さんは言います。

「中津箒」。使用している糸は草木染めです

「中津箒」。使用している糸は草木染めです

これは「中津箒」と呼ばれる伝統工芸。ホウキモロコシを自社生産し、職人さんが手作りで製作されています。その伝統を継ぐ若い職人さんの手にかかると、こんなふうにストラップがついた魔除け箒や、安産を願うお守りに。

「暮らしを豊かに彩るもの」にも新しい風が吹く。暮らしのもの 十和のコンセプトは、移り変わる時代への柔軟性を持ち合わせているのです。

「十和(とわ)」:たくさんの和むものを永久(とわ)に。

お店入り口の看板。シンプルなデザインが店内の雑貨になじんでいます。

お店入り口の看板。シンプルなデザインが店内の雑貨になじんでいます。

店名の「十和(とわ)」には2つの意味があります。まずは1つ目の意味から。「十和」の「十」は「たくさん」を、「和」は「和むもの」を表しています。つまり「たくさんの和むもの」を意味しています。

ひょうたん型の箸置きと、草花が似合う小さな花瓶。ガラスが涼しげです。

ひょうたん型の箸置きと、草花が似合う小さな花瓶。ガラスが涼しげです。

そして2つ目の意味。「十和」には「永久(とわ)」がかけられているのです。「“たくさんの和むもの”を長く使えるように」という願いをこめて、宇野さんが名づけました。店名の由来に違わず、他に代わるものがない魅力を秘めた、温かい手仕事の作品がセレクトされています。

先ほどのガラス箸置き・花瓶を手掛けた作家さんの風鈴。それぞれ音が違います。ガラスの向こう側に映る景色、ゆがんで風流です。

先ほどのガラス箸置き・花瓶を手掛けた作家さんの風鈴。それぞれ音が違います。ガラスの向こう側に映る景色、ゆがんで風流です。

一体どうしたら、暮らしが楽しくなるものを選べるのだろうか。宇野さんが仕入れのときに重視していることって何?

その着眼点を知りたくて、宇野さんに尋ねてみました。

 

お店に置くのは、「やっぱりすごい!」と思えるもの

置いておくだけで心が和む小物たち。

置いておくだけで心が和む小物たち。

「丁寧に作られていて、暮らしの中で長く使えるもの」。これが暮らしのもの 十和の揺るぎない基準軸です。お店の中を見回せば、手放したくなくなる心のこもった作品がみっちり並んでいます。

手作りの石鹸も。

手作りの石鹸も。

宇野さん自らクラフトフェアや展示会に赴き、作家さん本人に会って言葉を交わします。

「気になったものは、しばらく自分で使った後に作家さんから仕入れています。実際に使っていると、作家さんのすごさが分かるんです。何度でも感動して『やっぱりすごい!』って、ひとりでいるときも声に出して言ってしまうんですよ」

こぢんまりとしたお店なのに、ひとつひとつの作品に引き込まれ、つい長居。

こぢんまりとしたお店なのに、ひとつひとつの作品に引き込まれ、つい長居。

実際の生活で使い、「やっぱりすごい!」と思って集めたものが凝縮された店内。1坪だけれど1時間かけて商品を選ぶお客さんも。

「ここで7年近くお店をやっていますが、何度もリピートしてくださる方もいらっしゃいます。『他に代わるものがないから』と同じものを長く使ってくださるんですよ」

素朴で温かい作風のコップ。

素朴で温かい作風のコップ。

「やっぱりすごい!」。宇野さんの感動は、暮らしのもの 十和に足を運んだお客さんにもちゃんと伝わっていました。

大切な癒しの時間になくてはならないものをお届けしたい。
宇野さんがそう思うようになったことには、きちんと背景がありました。

 
「何かやらなくては。はじめてみなくては」

日本には数少ない、本物の線香花火。これが欲しくて、暮らしのもの 十和を訪ねるお客さんも。

日本には数少ない、本物の線香花火。これが欲しくて、暮らしのもの 十和を訪ねるお客さんも。

暮らしのもの 十和が妙本寺参道にお店を構えたのは、2011年の夏でした。ちょうど震災の起きた年。東北出身の宇野さんは当時、主婦でした。その前はインテリア・家具関係のお仕事をしており、ずっと昔からお店をやりたいと思っていました。子育てしながら、ぼんやりした“いつかの夢”を持っていた矢先、大震災が起きたのです。

「何かやらなくては。はじめなくては」

宇野さんは震災を機に自分の夢を思い出し、もう一度社会に出ようと思い立ったのです。

妙本寺の参道沿いに佇む、暮らしのもの 十和。

妙本寺の参道沿いに佇む、暮らしのもの 十和。

「このお店は20代・30代の頃から自分の中にあったものを形にしたものです。もともと作家さんの手仕事が好きで、子育て中の限られた時間に作家さんの手仕事を探してお店をめぐったり、実際に使ったりしていました。忙しい日常の中に手仕事の器があるだけで、ほっと一息できる心地よい時間をすごせたんです。子育て中の限られた気分転換でした。」

日ごろから使えるコップや器がたくさん。

日ごろから使えるコップや器がたくさん。

「ちょっとしたものでも、その器に合う料理を作る幸せや癒しに助けられていたんです。丁寧に作られた手作りの器を使うと、料理がよりおいしそうに見えます。だから、自分と同じような思いのお客さんに癒しを提供したいと思っています」

暮らしのもの 十和が妙本寺で産声をあげたバックグラウンドには、宇野さんのこんな物語があったのです。

 

お客さんと作家さんをつなぎたい

ガラスの花瓶のネックレスバージョン。生の花をアクセサリにできるなんて斬新です。逆さにしても水がこぼれません。

ガラスの花瓶のネックレスバージョン。生の花をアクセサリにできるなんて斬新です。逆さにしても水がこぼれません。

「たった1坪しかない小さなお店なので、お客さんにご迷惑をおかけしてしまうこともあります。でもその分、1坪以上の接客をしたいと思っています」

宇野さんが目指しているのは、作家さんの声をお客さんに伝え、お客さんの声を作家さんに届けること。

これは、沖縄の作家さんが手がけたもの。日本全国の作家さんの作品を扱っています。

これは、沖縄の作家さんが手がけたもの。日本全国の作家さんの作品を扱っています。

「作家さんの作品には、個性と人柄がきちんと出ているんです。作家さんとお話しして、自分でそれを使い、お客さんにお伝えすること。そして、その作品を使ったお客さんの感想を作家さんに届けることが、私の役目だと考えています」

職人さんが手がけたお箸で食べる料理は、美味しさが増します。

職人さんが手がけたお箸で食べる料理は、美味しさが増します。

作品に込めた作家さんの思いやお客さんの感想を、宇野さんは“見えない後ろ側の部分”と呼んでいました。作家さんとお客さんがお互いに見られない部分を宇野さんが伝える。それによって、作品の価値は何倍にも膨れ上がります。

たくさんの思いが詰まった作品が集まるから、暮らしのもの 十和に入るとあっという間に時間が経つのです。

「暮らしのもの 十和」店舗情報
店舗名:暮らしのもの 十和(くらしのもの とわ)
所在地:〒248-0007 神奈川県鎌倉市大町1-16-19 KAYA gallery 1F
営業時間:11:00~17:30
定休日:月曜
電話番号:0467-95-3282
アクセス:JR各線、江ノ島電鉄線「鎌倉駅」東口より徒歩6分
HP:http://towa.jpn.com/
Twitter:https://twitter.com/shoptowa
※臨時休業、商品情報等はTwitterにてお知らせ
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【ギフト対応】
包装に使用します。

包装に使用します。


包装は中身の作品を損なわないシンプルさが特徴的。
他店購入物の同梱は不可。熨斗対応は事前予約が必要。
郵送は可能。

 
「妙本寺のこの場所からは、心が離れません。」宇野さんはお店を構える場所にもこだわりました。静かなお寺の参道なら、にぎやかな場所ではできないことがある。

めずらしい参道沿いのお店に立つ宇野さんは、奥ゆかしく、しっとりとした美しい方でした。家に帰ればお子さんにも、お店でのことを話します。お客さん、作家さんはもちろん、雑貨屋さんを通して家族もつなげる丁寧な仕事は、今日もここで紡がれています。

writer 瀬尾愛里紗


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