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海福雑貨 ~「ここにしかないモノ」を探す冒険を~

time 2018/09/07

海福雑貨 ~「ここにしかないモノ」を探す冒険を~

東林間には雑貨屋さんの王様「海福雑貨」があります。
そんなに知られたお店なら、きっと大通りに面しているのだろう。そう思って地図を見ると、「あれ、住宅地にあるんだ!」

どんなお店かどきどきしながら歩いてゆくと、アパートの立ちならぶ住宅街の中に昔懐かしいお店がひょっこり姿を現します。

 

 


ちょっと2階の「海福雑貨分室」が気になって、階段を上ってみました。

 

 


 

1つのお店に2つの世界

 

 

本当に、なんの変哲もないアパートの一室だ…。
「まさかここが雑貨屋さんだとはね」なんて考えつつ、ドアを開けました。

 

 

なんだか鉱石や標本、化石や古いモノを収集している博士のお部屋に遊びにきたみたい。

実は海福雑貨、1階と2階でまったく違う2つの世界を持っています。

1階は「かわいい、きれい、明るいもの」で、作家さんの作品や海外からの輸入雑貨が密集しています。
1か月ごとに作家さんのプチ個展も開催されています。

 

 


取材日は作家・ターニャさんのマトリョーシカがプチ個展にてお出迎え。

一方2階は「あやしい、不思議、渋いもの」がぎっしり集まって、どちらかというと理科系・工芸よりの雑貨がメインです。

石油用途説明標本。かなり専門的です。

石油用途説明標本。かなり専門的です。


それぞれの部屋のテイストが違うから、作家さんの作品も1階に置くものと2階に置くものに分けられています。

「1階と2階の雰囲気が全然違うので、お客さんも上目的の方と下目的の方に分かれますね」
内観を一目見ても、雰囲気が違います。

こちらは1階。

 

 


一方で2階はこんな雰囲気です。

 

 


1つのお店に2つの異界。
“博士のおじさん”と“魔法使いのおばさん”の部屋を行き来しているような錯覚に陥ります。

一体どんな視点で、海福雑貨の空間が創り出されているのでしょう。

 

コンセプト:好きなモノを好きなだけ。

今にも羽ばたいて行ってしまいそうな、美しい蝶の標本。

今にも羽ばたいて行ってしまいそうな、美しい蝶の標本。

お店に置いている宝物たちは「自分たちが納得して選んだもの」。
遠藤さん夫婦が「これはいい」と直感で集めた好きなものが、海福雑貨の棚にみっちり並びます。

海福雑貨で見つかるのは、虫の標本や古物、オリエンタル・クラシックな輸入雑貨、そして作家さんの作品です。

その中でも海福雑貨の名物はこれ。

 

 

これはエジプトから輸入している香水瓶です。1つ1つ、エジプトにいる職人さんの手作り。
「エジプトの香水瓶を開けるとフワッとエジプトの香りがするような、そんなロマンがあるんです」

エジプトの香水瓶のほかにも、ヨーロッパテイストの食器も見つけました。

 

 

エジプトの香水瓶も、この食器も1階にあるお宝です。

一方、2階の分室ではこんなものを掘り出しました。

 

 

これは幻灯機フィルムと呼ばれるもので、フィルムに光を当てて壁に画像を映し出すものです。映画発展の足跡です。

部屋の高い場所には、古い振り子時計がかかっていました。

 

 

部屋のあらゆるスペースが、歴史を背負った古物で埋め尽くされています。
時間が止まったような、懐かしくあやしげなレトロ感からは、遠藤さんオリジナルの着眼点が伝わってきました。

もちろん人が作った古物だけではありません。自然が生み出した宝石も、海福雑貨で発掘できます。

蛍石はラムネのような透明感。

蛍石はラムネのような透明感。


分室の入り口付近には、ウニの殻も。
 

 

海福雑貨を探検しているうちに、めずらしいモノがいっぱいのお店ができたきっかけが知りたくなって、遠藤さんに聞いてみました。

 

「好きな空間で自分の仕事を創りたかったんです」

1階の作品「宇宙標本」。

1階の作品「宇宙標本」。

めったに見かけない、ものすごい個性を持った雑貨屋さんなのだから、遠藤さんはもともと古物や雑貨が好きだったんだろう。

そう思っていたところ、遠藤さんから意外な答えが返ってきました。

「もともと雑貨自体に興味があったわけではないんです。むしろお店を作ってから雑貨の世界に入りこみました。海福雑貨を作ったのは、『自分の空間を作って、そこで働きたい』という気持ちが強かったからですね。自分の仕事は自分で作り出したかったんです」

寒天みたいに透き通ったイヤリング。これは1階のもの。

寒天みたいに透き通ったイヤリング。これは1階のもの。

自分の好きな場所で働く。
そこで選んだ場所が、遠藤さんが育った東林間でした。

「地元愛というわけではないんですけれど、自分にとって落ち着く場所がここでした」

地元関連の活動としては、東林間のお店を紹介した『いつでもおさんぽまっぷ』の作成や『オダサガ文化祭』があります。これらも遠藤さんが自発的にはじめた活動です。

 

 

「オダサガ文化祭は作家さんの同窓会みたいなイベントです。年に1回、駅の上のスペースを借りて、思い思いのハンドメイドクラフト品を並べる発表会です。東林間にはたくさんの雑貨屋さんがありますが、美術系の大学やギャラリーが多いことが由来しているのではないかなと思います」

遠藤さんは海福雑貨を通して「自分の好きな場所」を作り、活動範囲を広げていました。

もともと雑貨好きというわけではなかったけれど、遠藤さんの背景は海福雑貨につながっています。

細かな部品を使った繊細な作品。

細かな部品を使った繊細な作品。

「大学時代は東洋史を専攻していて。本当は西洋史が好きなんですけれどね。でもトルコやキプロスなんかの中東系やギリシャ系の文化が好きでした」

「それが海福雑貨のエジプト香水瓶につながっているのかもしれませんね」

「そうかもしれません。西洋史も好きだったんで、古物のデザインを見てどの地域のどんな時代のものなのか、だいたい分かるんです」

海福雑貨を開いてから古物商の免許を取った遠藤さんに、こんなルーツがあるのは納得です。

海福雑貨の背景は他にもあります。

カタツムリの殻にも見える、地図絵の小物。

カタツムリの殻にも見える、地図絵の小物。


「高校の頃、つまらない授業の間にシャープペンシルを使って”地図絵”というものを描いていたんです。これは完全な空想による地図で、時間つぶしの副産物です。今では、海福雑貨のポストカードやTシャツ、小物にしてお店で出しています」

複雑な地図を見ていると、どんな街なのか、どんな人が住んでいるのか、こちらも空想の世界にふけってしまいます。

こうして遠藤さんの過去の点と点がつながって、海福雑貨の独自性となっているのです。

 

海福雑貨:自分のお店で小さな幸せを見つけてほしい

 

 


海福雑貨というめずらしい名前の店名は、2つのものが組み合わさってできています。

「僕の名前は和海で、そこから『海』を取りました。『福』はささやかな幸せが見つかるようにという願いをこめてつけました」

そしていろんなモノを集めたお店だから、「海福雑貨」という店名が生まれました。

お店の外壁の絵と文字は、油絵の作家さんに描いてもらったものだと遠藤さんはいいます。

 

 

「でもたまに中華屋さんと間違えられちゃうんです。『海福飯店』みたいな」

ちょっと面白い話も聞けてしまいました。

 

雑貨屋の未来を考え抜いたオリジナリティ

レトロな古い瓶は1階の窓際にぎっしり並んでいます

レトロな古い瓶は1階の窓際にぎっしり並んでいます

雑貨屋の王様として、とてつもないオーラを発している海福雑貨を知ってから一番気になっていたこと。それは、お店のオリジナリティです。

雑貨屋さんってたくさんあるけれど、どうしたらこんなに個性を出せるのだろうと、不思議でした。

 

 

「オリジナリティについては、僕もものすごく考えています。開業当初は作家さんの作品をメインにしていました。でも海福雑貨をはじめた当時、東林間に骨董屋があって、そこでつながりができたんです。それがきっかけで、古物商の免許を取って1年後には古物も扱うようになりました」

小さな骨董屋さんとの出会いが、大きな転換点。

 

 

「それから、アメリカの東海岸にも毎年1回訪れています。一つの地域をじっくり掘り下げて、車でめぐっています。そういう場所で1850年代のアルバムや、イギリスのバター小皿なんかが出てくるんです。アメリカの東海岸ってイギリスの植民地だったし、戦争で焼けていないから、古いモノが家に残っていることが多いですね」

なるほど、遠藤さんは古いモノがある場所に自ら“発掘作業”に出かけていたのです。

部屋の中をよく見ると、古い本が至る所にあります。

部屋の中をよく見ると、古い本が至る所にあります。


海福雑貨の個性は、お店がたたずむ場所にもにじみ出ています。

大きな通り沿いではなく、「川島荘」という住宅地の中にあるアパートにお店を構えた理由。それは「好きな場所でこっそりお店をやりたかったから。本当に好きな人にだけ、お店に来てほしかったから」

 

 

独自の考え方でお店を経営する遠藤さんは、雑貨屋さんの未来も見据えていました。

「10年前までは今ほどハンドメイドが流行っていなかったんです。でも今はどんな人でも手作りの雑貨を世に出せるようになりました。だから、雑貨屋さんの役割が変わってきているんです」

海福雑貨の遠藤さんは、これからの雑貨店の在り方を切り開くパイオニアでした。

 

「ここにしかないモノ」を探している人へ

魔法使いの杖を思わせる「ガラスペン」。

魔法使いの杖を思わせる「ガラスペン」。


どこに行っても簡単に手に入らないモノが、海福雑貨には集まっている。

「贈り物をあげる側の人って、結構こだわりませんか。どこでもあるものではなくて、本当にそこにしかないモノを選びたいって思います。『海福雑貨にきたから、これを買った』って、選んだ本人にも贈った相手にも喜んでもらえたらいいなと思います」

でも、海福雑貨にきたらお土産にあげるはずだったものは、自分のものになってしまいそう。

試験管などの理科系雑貨もたくさん。

試験管などの理科系雑貨もたくさん。


「目的はなくても、宝探しに来てほしい」

地図絵からはじまった遠藤さんの世界へ、今日もたくさんのお客さんが冒険にやってきます。
 

「海福雑貨」店舗情報
店舗名:海福雑貨(うみふくざっか)
所在地:〒252-0311 神奈川県 相模原市 南区 東林間3-18-3 1F
営業時間:11:00~18:00
※分室は金・土・日のみ、12:00~17:00まで営業。
定休日:火・水・祝
※分室は、月~木がお休み。
電話番号:042-705-3392
アクセス:小田急江ノ島線「東林間駅」より徒歩15分、小田原線「小田急相模原駅」より徒歩12分
※小田急線「小田急相模原駅」は、JR横浜線「相模原駅」とは異なります。
HP:http://umick.com/access.html
Twitter:https://twitter.com/umifukuzakka
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【ギフト対応】
包みはとてもシンプルで、「海福雑貨」の文字がレトロ。無料で包んでもらえます。
他店購入物の同梱、郵送可。
熨斗対応は不可。
 

 

 
海福雑貨はひっそりとした住宅地の中にあるのに、取材の日はたくさんのお客さんが思い思いに宝物を探しにきていました。

ここは雑貨を買いに行く場所というよりも、宝さがしの冒険に行く場所。

遠藤さんの独特な着眼点と未来を見抜く力で、海福雑貨はこれからも大きな冒険をし続けます。

writer 瀬尾愛里紗


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